チベットでのヨーガ修行記 第2回目は、高山病対策について。
チベットの地は、”平均標高が4,000m以上”と言われています。
地球上で最も海抜が高く、最も広大な高原、チベット。
地球の高度4,000m以上の地域を占める面積の85%以上がチベットだそうです。
そんな酸素の薄い、過酷な環境だからこそ修行になるのですが…高山病で死んでしまっては元も子もないので、しっかり対策をしていきました。
それでも、
やはり、
キツかった・・・
前回のブログに書きましたが、チベットでの私の平均 酸素濃度(酸素飽和度/SpO2 )は85%
平均なので、もっともっと低い時もありましたし、低い数値を見るのが怖くて測らない時もありました…笑
まずは、どのような高山病対策をしたのか、第一関門をどう乗り越えたのかをご紹介します。
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*低酸素トレーニング高所テスト にとぶ↓
*低酸素トレーニング4500-5500m にとぶ↓
*高山病の第一関門 にとぶ↓
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※今回はインドではありません
低酸素トレーニング
高所テスト
先輩に教わり、代々木にあるミウラ・ドルフィンズさんの低酸素室へ、トレーニングに行きました。
(ミウラ・ドルフィンズさんHPはこちら)
ここでは、自分なりの高山病の対処方法を習得します。
まず”海外高所テスト”を行い、低酸素の環境下で自分の体はどのような反応をするのかをテストします。
その結果、私は、自分の身体の危険信号をしっかりキャッチして対処できたので、テスト結果は”許容範囲内”でクリア!
低酸素の環境下で不調になるのは当然のことなので、ポイントは、自分の「危険」と思ったタイミングで呼吸法をして、酸素を体内に取り込み、重症にならない状態に戻すことです。
スタッフさんおすすめの呼吸法は、目の前にろうそくの火があって、それを口をすぼめて消すイメージで何回か呼吸をする。
そして、吐き切る前に息をする方法。
でも、ヨガをしている人に対しては…と
「普段しているヨガの呼吸法をいくつも試しながらやってみて!」と言われました。
そこで私は、ヨーガ療法やラージャ・ヨーガの呼吸法をやってみました。
そしたら…
スカ・プラーナーヤーマ→数値が微妙に下がる
ナーディー・シュッディ→数値が微妙に下がる
カパラバティ→数値爆あがり
なぜか私は、深い呼吸をする呼吸法はSpO2 が上がりませんでした。(周りの仲間に聞いたら、皆さんはこれで数値を上げていたので、私だけかもしれません)
そして、カパラバティは私にとって効果あり。
あっという間にSpO2 が上がりました。これには驚き!!
※カパラバティは、ラージャ・ヨーガ修行経験のない人にとっては危険です。自己流にやらないでください。自律神経が狂ってしまうそうです。以下のように、数値の上下が激しいくらい効き目があるので、方法を間違えると危険です。
私は低酸素室から出て、スタッフさんが私のカパラバティをした時のSpO2 の変化のグラフを見て、「その呼吸法だと効きすぎかも。もう少し優しい呼吸法ない?それで高所順応した方が良いかも」とアドバイスを頂きました。
というのも、私は、SpO2 が60%を切る頃にカパラバティ呼吸法をして90%に戻す、ということを繰り返していたのです。(危険ですので真似しないでください笑)
「呼吸法の効果が切れる頃に急激にSpO2 が下がっているのではないか、90%まで上げなくても80%台に戻すようにすれば良いよ。そうすれば60%まで下がらないと思う」とのことでした。
なるほど!と、納得。
低酸素トレーニング
4500-5500m
テストの次は、標高4500mを想定した酸素の薄い部屋に入り、パルスオキシメータをつけながら身体を動かしてみました。
そうしたら…すぐに酸欠状態に。
私は、呼吸法をいろいろ試した結果、カパラバティとスタッフさんおすすめのろうそくの火をけす方法をミックスした、Minamiオリジナルの呼吸法(超ゆっくりカパラバティ)をすると、SpO2 が安定することがわかりました。
そしてスタッフさんには「酸素が足りなくなった時の感覚を覚えておくように」と言われていました。
私の場合は、胸の上が苦しくなる状態は危険信号だと知りました。
その前段階(頭がぼーっとする、視界がほわんとする、頭が痛くなりそう)の時点で対処する必要があるということがわかりました。
※この前段階の症状も個人差あり
対処法は、呼吸法をすること。これに尽きます。
ただし、低酸素状態に慣れると感覚が変わって気付きにくくなっている可能性があるため、こまめに水分補給が必要とのこと。
また、運動時は酸素をたくさん使い、睡眠時には呼吸が浅くなるので、SpO2 は下がります。
スタッフさんには、「枕元には水分と保湿剤を置き、夜中に苦しくて目覚めたら呼吸法と水分補給をして、それからまた寝るといい」と教わりました。
寝て大丈夫なの?と思いましたが、「寝ているときでも苦しくなれば目が覚めるはずだから、その後に身体を起こして呼吸法をして元に戻せば大丈夫だよ」とのことでした。
テストでは寝て測定もしましたが、寝ると胸の上が苦しくなったので、ちゃんと目覚められそうです。
その後、スタッフさんより余談が…
「9日間でチベットへ行ってカイラス山の周遊をした団体があって、その中で1名帰らぬ人になったらしいよ」と。
とても怖いお話をされていました。
しっかりとした準備が大事だと痛感…怖
他のスタッフさんからも、幾つものアドバイスをいただきました。
・車移動の時に疲れたからと言って寝てしまうと、呼吸が浅くなって高山病になるから、寝ないように!そして、車の中で呼吸法をすること
・ここで行ったウォークよりもステップの方が酸素量が下がりやすいから、斜面を歩くときは少しずつ登っていくのが良いよ。一気に登ろうとしないように
岩を登る時も、低い岩を遠回りして登るように
・夜寝るときは水分をとって温かくするように
・時間が余ったからって部屋に戻って昼寝をすると具合が悪くなるから、寝ずに水分をこまめにとるように
・高所だと乾燥して水分がもってかれるから、喉が乾いてなくてもこまめに水分をとるように
・不安が脳の酸素を少なくするというエビデンスがある。声を出して笑うのも良いよ
また、私は実際低酸素室でトレーニングをし気づいたことは、ゆっくりと歩くリズムに合わせて息を長めに吐くことがコツだと思いました。
そして、過去の経験者の体験談と自分とでは症状や対処法が少し異なったので、やはり個人差があって、自分なりの方法を見つけるしかないということがわかりました。
チベットへ行く前に試すことができ、このようなことが知れてよかったです。
さらに、ここまで過酷な環境下に身を置いてみないと、呼吸法の真の効果は実感できないんだと思いました。
ラージャ・ヨーガの呼吸法は効果があるけれども、やりすぎると危険だということを再確認。
高所順応ではヨーガ療法の呼吸法にしようと思います。
ついでに書きますが、うつ病罹患中の呼吸法は本当にしんどいです。むしろ全然できない。
私の場合、うつ病が重症の時でもヨーガをオンラインで受けていたけれど、優しい呼吸法ですら2回程でとても苦しくて断念していました…
メンタルと呼吸と脳が密接に関係していることを実感です。
ちなみに、
普段の私のヨーガ療法のクラスでは、ラージャ・ヨーガの呼吸法は行っていません。
人によっては危険が伴うためです。
(それでもやってみたいという方は、ヨーガ・ニケタン日本校のYIC講座を受けてくださいね)
高山病の第一関門
ここからは、チベットでの生活2日目と3日目についてのお話を、高山病と絡めてしていきたいと思います。
まずこの修行会の一番最初の高所の地は、ラサの空港(標高3570m)*です。
着陸した途端、息苦しさと頭重感がありました。
(一般乗客は酸素ボンベを一生懸命使って対策していました)
何もしないでいると一気に高山病にかかるので、空港内を歩きながら定期的に呼吸法をしたり、仲間とおしゃべりしたりして対策しました。
おしゃべりをするだけで、しっかり呼吸ができるのでオススメです。
呼吸法をすれば症状はすぐに治りました。けれども、手先を見ると爪が青い・・・
酸素が末端まで巡っていない証拠です
その後すぐにホテルへ向かいました。ここの標高は3650m。
昨日からの移動で疲れたし、軽い高山病の症状があるから、お昼寝したいところだけれども、、
「初日は時間が余っても昼寝しちゃダメ!」との先輩の言葉を思い出しました。
寝ると呼吸が浅くなって酸素の摂取量が少なくなり、高山病が悪化するからです。
現地ガイドさんからも「高所順応のために公園へ行きます〜」と案内がありました。
さっと荷物を置いて、仲間と一緒に近くの公園(観光スポット)へ行きました。
頻繁に息が苦しくなるので、歩きながらの呼吸法は欠かせません。
楽しく公園でのお散歩を終えた頃にはもう夜。
といっても外は明るいです(日没は夜9時ごろ、中国は時差がないのです)。
夕飯を食べにホテル内のレストランへ行きましたが、ここで、事前にドクターから聞いていた言葉を思い出しました。
「初日の食事は控えた方がいい!全部戻してしまうから」
いただいたご飯はとても美味しいし、もっと食べたいし、食べたら疲れ取れそうだけども…と葛藤しながらも、我慢をして控えめに食べました。
この、
夕飯の後が
第一関門でした。
夕飯前は頭重感と多少の眠気程度でしたが、食後、一気に頭痛・眠気・疲労感がひどくなりました。
思わず
「これが高山病か〜、ついに来た」
と。
低酸素室トレーニングでのスタッフさんからのアドバイスで「高所に行くわけで、頭は痛くなるし酸素量は減るものだから、あとは呼吸法と水分補給で対処するように!」と言われていたので、しっかり対処していましたが。
一気に辛くなったので、不安になりました。
そこで現地ガイドさんに「今夜は普通に寝ても大丈夫ですか?」と聞いてみたら、「大丈夫だよ〜、ゆっくり休んでね」とのお返事…笑
チベット人恐るべし!
少し安心したけれど、、
部屋に帰って、荷物の整理をしたりシャワーを浴びたりするだけで、超息切れです。
息苦しくて、ちょっとの動作も大変でした。
その度に、今は3600m越えの地にいることを思い出していました。
そうこうしているうちに、頭痛、胃もたれ、だるさや眠気が一気に襲いかかってきて超しんどい。特に頭痛が半端ない!
このままでは眠れないと思って、夜23時くらいだったか、部屋の中をうろうろ歩き回っては呼吸法、をひたすら繰り返していました。
10分、15分続けていたら、次第に頭痛が和らいでいきました。
寝られる程度の痛さに戻ったので良かったです。
頭痛には、酸素をたくさん脳に送り込むことが大事だと実感しました。
そして、恐る恐る就寝。
夜中には、2-3回、息苦しさとトイレで目が覚めました。
その度に、アドバイス通り、呼吸法と水分補給をして死なないように気をつけました。
(高山病予防薬のダイアモックスを飲んでいたこともあり、トイレが近くなります)
色々対処したおかげで、
何度も目が覚めたわりには爆睡した気分で、翌朝の目覚めはスッキリでした!!
翌朝のSpO2 は87%でしたが、高山病の症状はなくなったので、恐怖も消えました。(一安心)
*
☆次回→高山病第二関門について
★前回の投稿→準備から帰国後の感想
* * *
*私たちの団体は、皆無事に全日程を終えて帰国しました。伝統的ヨーガ日々行じていると、酸素ボンベの助けもなしで生活できると実証できました。
*
【高山病について】
*2400m以上の高山に登ると、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気 ( めまい ) の症状が出るそうです。今回の修行の場合、ラサの空港に着陸した地がすでに標高3570mでしたでの、必死に呼吸法をしていたのです。
それ以外の一般的な症状として、顔や手足のむくみ、眠気やあくびなどの睡眠障害、運動失調、放屁などが現れることもあるそうです。
一般に、1~数日後にはそのような症状は解消されます。
2400メートル以上の高地に移動した日は、すぐには休憩せず 30 分~ 1 時間ほど歩きまわることで、人体の高所順化を促すことができると経験的に知られています。
*海抜0メートルの空気と比較すると、標高5800メートルでは空気中の酸素の量は半分になり、1500m を境に、1000m につき 10% の低下率で減少していくそうです。
*高地では、酸素を摂取して心臓に送り込むまでの肺の働きが限界に達してしまうため、全身の運動を行うと身体は疲れやすくなり、疲労困憊の時期も早くなります。
チベットの通訳さんには、たとえ急いでいても「走らないで!」とよく言われたのはこのためです。
<参考>
◯公益財団法人 身体教育医学研究所 「高地トレーニング ってなに?」
https://pedam.org/wp/wp-content/uploads/2020/04/32PHandbook0317.pdf
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